一般社団法人日本住宅リフォーム産業協会 パネルディスカッション「リフォームの質を考える日」
第1回~第5回 まとめ
ジェルコが2022年3月から5回シリーズで行ったパネルディスカッション「リフォームの質を考える日」では、毎回のテーマに沿った基調講演や事例発表が行われ、パネルディスカッションでは全国の会員企業の方々に登場いただき、リフォームの質をどのようにとらえているかについて各社の最新の実践事例や今後の課題などを議論してもらった。ジェルコビジョン2030に掲げた「質の高いジェルコリフォーム」とは何かについて、その本質をどう考え、今求められている質とはどんなもので、今後の高齢化・人口減少、またコロナ後の新たな社会ではどんなことが新たな「質」として必要とされるのかなどについて、様々な意見、実践事例が発表された。
第1回では「リフォームの質」について真正面から議論。経営から現場まで様々な質が提起された。第2回からは今大きな課題である資産価値、施工品質、人材育成などついて議論。開催方式は全国のより多くの人に参加してもらえるようオンラインセミナー形式で行われ、参加者もジェルコ会員だけでなく会員外のリフォーム事業者、業界関係などが毎回100名集まり盛況であった。第1回から第5回までの累計参加者は400名を超え大きな関心を集めた。
パネルディスカッション「リフォームの質を考え日」の第1回から第5回の講演・事例発表、ディスカッションのテーマ、後援者、パネラーは次の通りである。
・第1回「ジェルコが考えるリフォームの質とは?」(2022年3月29日開催)
▽事例発表
1.「提案品質」=㈱土屋ホームトピア企画戦略課長・三橋竜太郎氏
2.「経営品質」=㈱キタセツ代表取締役・北川拓氏
パネラー=㈱アルティザン建築工房代表取締役・新谷孝秀氏、㈱やまもと住研建築営業
部長・多尾田健二氏、業務支援㈱代表取締役・石原直之氏
ファシリテーター=リフォームビジネス研究所・時田裕子氏
・第2回「今、アメリカのリフォーム市場で何が起こっているか?!」(2022年12月2日開催)
▽第1部・講演「アメリカのリモデルから見える質」
IBMF事務局長兼LIPI事業部長、iKBDG事業部長クリス菊池氏
▽パネルディスカッション「住まいの資産価値とリフォームの質」
パネラー=㈱ユウワ代表取締役・今井直人氏、価値住宅㈱代表取締役・高橋正典氏、㈱
北洲代表取締役社長・村上ひろみ氏、ジェルコビジョン推進室長・杉村喜美雄氏
ファシリテーター=㈱エルエルアイ出版・福原正則氏
・第3回「トラブル事例から見えて来るリフォームの質」(2023年4月4日開催)
▽第1部・講演「住まいるダイヤルに寄せられるトラブル事例」
(公財) 住宅リフォーム・紛争処理支援センターリフォーム情報部長・平井裕一朗氏
▽パネルディスカッション「リフォームの質を提案・設計・施工から考える」
パネラー=㈱アルティザン建築工房代表取締役・新谷孝秀氏、㈱山口建設代表取締役・
山口博康氏、㈱ナックプランニグ品質向上委員会委員長・阿部倉宗平氏、㈱三友工務店
工務主任・吹春 清文氏
ファシリテーター=㈱エルエルアイ出版・福原正則氏
・第4回「リフォームの質を人材育成から考える」(2023年6月30日開催)
▽第1部・各社事例発表・各社での人材確保と育成について
▽第2部・パネルディスカッション
パネラー=山商リフォームサビス㈱代表取締役・熊谷和樹氏、㈱ビッグアイ代表取締役
社長・杉浦克子氏、㈱ニッソウ代表取締役社長・前田浩氏、㈱テオリアハウスクリニッ
取締役営業部長・平一暁氏、業務支援㈱代表取締役・石原信之氏
ファシリテーター=㈱大堀商代表取締役・大堀正幸氏
・第5回「リフォームの質をジェルコの存在意義から考える」(2023年8月4日開催)
▽第1部・基調講演「存在意義(PURPOSE)からリフォームの質を考える」
㈱シード・アンド・アーキテクチャー代表取締役、中小企業診断士・岡本光氏
▽第2部・パネルディスカッション
パネラー=㈱ゆめや代表取締役・盛静男氏、㈱アルファテック代表取締役・望月俊彦氏、
喜多ハウジング㈱常務取締役・今井猛氏、㈱マイホームデザン代表取締役・遠藤光二氏、
エスシテム㈱代表取締役・佐々木俊明氏
ファシリテーター=岡本光氏
第1回 「ジェルコが考えるリフォームの質とは?」
第一部の冒頭では、盛会長が「ジェルコビジョン2030 を掲げてから丸3年が経ちましたが、リフォームの質に対する捉え方は三者三様で大きく異なります。そこで本日はリフォームの質について徹底討論したいと思います」と挨拶し、ジェルコビジョン2030 の内容や推進ロードマップについて説明。続いて望月副会長より実践研修会の趣旨説明が行われ、「品質」は「視点」によって変化するプロセスを解説し、様々な視点に触れることで多様化するニーズに対応していくことができると述べた。
事例紹介のトップは、㈱土屋ホームトピアの三橋氏による「提案の品質」と題した事例発表で、2021 年のリフォームコンテストで入賞した2物件を紹介。1件目の事例では、生活者の想いを盛り込みつつ、限られた予算におけるリフォーム箇所の取捨選択について、2件目の事例では家族構成と生活動線、地域性などに配慮した間取りを紹介した。事例紹介の二番目は、㈱キタセツの北川氏による「経営の質」と題した事例発表が行われ、リフォーム経営の質を向上させる重要なポイントとして、人の温もりを感じるDX(デジタルトランスフォーメーション)経営を行い、経営者が「愛」を持って、人材育成や職場環境の整備を行うことを挙げた。またその一方で、理念を持って時流に乗り、デジタルをフル活用しつつアナログと融合させる「血の通った」経営についても解説した。
パネリスト達による白熱したディスカッション
第2部第二部では「ジェルコが考えるリフォームの質とは?」と題したパネルディスカッションが行われた。ファシリテーターにリフォームビジネス研究所の時田氏、パネリストに北海道支部から㈱アルティザン建築工房の新谷氏と㈱土屋ホームトピアの三橋氏、関東甲信越支部から㈱キタセツの北川氏と業務支援の石原氏、中国四国支部から㈱やまもと住研の多尾田氏らを迎え、リフォームの質についての意見交換を行った。
最初のテーマとして「我社の求める・考えるリフォームの質」について意見が交わされた。
この中で新谷氏は「最初はリフォームの質は技術力であると思っていましたが、現在では顧客満足度を高め、より良いソリューションを提供することに本質があると考えています」と述べた。三橋氏は「リフォームを通して、お客様はもちろん、提案や施工を通じて社員まで幸せになれるよう、日々研鑽していく姿勢そのものが自社のリフォームの質であると考えています」と述べた。多尾田氏は「リフォームの質は、顧客の大切な資産を守ることに集約されていると思います。そのために必要となってくるのが、現場との信頼関係の構築ですが、その信頼を勝ち得ることこそがリフォームの質の本質だと考えています」と述べた。石原氏は「リフォームの質は、スタッフの質・サービスの質・イメージの質・買いやすさの質・経営の質の5つに分類することができ、それらを多角的に高めることで品質向上を図ることができると考えています」と述べた。
続いて、従業員の質を高めていくための施策について具体的な事例紹介を行った。㈱土屋ホームトピアは大手ならではの研修制度や定着率などについて紹介した。㈱アルティザン建築工房では社長自らが企画したセミナーの実施や、感性を磨くための見学ツアーなどの事例を紹介した。㈱キタセツでは、マネジメントツールの効果的な使用方法と、画一的な情報の共有事例を紹介した。業務支援の石原氏は、クレーム対応などを例に挙げ、適材適所の人員配置と、情報共有の重要性について説明した。㈱やまもと住研も同様に、クレーム対応時の判断基準や原因などを若い社員も含めた全社で共有している事例を紹介した。
パネルディスカッションの中盤では粗利率が話題に上った。北川氏は理想的な粗利率や粗利の可視化について、新谷氏は物件の規模に応じた積算のやり方や粗利のチェック、仕入れ時の発注内容を標準化することの重要性を説明。三橋氏は積算業務における経験の重要性や追加工事が発生した場合の対応などについて事例を紹介した。多尾田氏は直近の商談で値引きを回避した経験を紹介し、施工費と品質はトレードオフの関係にあり、品質を犠牲にしてまで値引きを希望するお客様は少ないことを紹介。粗利確保と施工品質の確保が密接な関係にあることを解説した。石原氏は、上司と部下で粗利に対する意識に差があることを指摘したほか、売上に関しても日々の変化を適切にチェックすることの重要性を訴えたほか、粗利の高い顧客ほど満足度が高いという傾向についても紹介した。また、自社が提案するプランの良さや強みを顧客にどう伝えるかについて、新谷氏はリフォームの質を数値化・標準化することで分かりやすくなると解説した。
パネルディスカッションの最後では、視聴している会員から質問事項がパネリストに投げかけられ、悪質訪問販売業者に関する消費者からの相談や、台風や地震などの災害復旧における業務体制、職人不足に対するリフォーム業界としての対策、住宅の試算価値を高めるための質、リフォーム業の地域性と相見積などの質問について、パネリスト達は各々の私見を述べた。
最後に第二部の締めとして、ファシリテーターの時田氏がパネリスト達が考える「リフォームの質」に関するキーワードを伺った。新谷氏は「“丹精込めて”を心がける」、三橋氏は「ライフデザインの一画として何を提供できるか」、北川氏は「いかにお客様に寄り添うか」、多尾田氏は「人」、石原氏は「お客様に対しては家族の幸せ、業者に対しては“お客様に聞け”」と、各々のキーワードを発表し、研修会は盛況のうちに幕を閉じた。
第2回 「今、アメリカのリフォーム市場で何が起こっているか?!」
「アメリカのリフォーム市場で何が起こっているか」――と題した刺激的なテーマを掲げて、第2回ジェルコ「リフォームの質を考える日」の講演とパネルディスカッションが、12月2日午後からオンラインで開催された。全国から会員のほか会員外のリフォーム事業者などが50名参加した。
ジェルコでは、これからの大きな社会変化に向けてリフォーム事業者の新たな対応と行動指針をまとめた「ジェルコビジョン2030」を策定し、さまざまな活動を展開している。その中で「質の高いリフォームの提供」を掲げているが、その「リフォームの質」とは何かについして議論を重ねている。昨年3月に行われた第1回では、リフォームの「質」を工事品質やデザインだけでなく営業、アフターメンテナンス等、リフォーム事業の様々な側面から議論された。今回のテーマでは、リフォーム・リモデル先進国、住宅資産価値の大国である米国のリフォーム市場の最新の姿や今後の課題を学び、日本でも新たなテーマになっている「住宅資産価値の向上」にとってリフォームの果たす役割、求められるものを、改めて学び考えようというものである。
まず第1部の講演では、(一社)国際建材・設備産業協会事務局長の菊池クリス氏が「ニューノーマル、ライフスタイルに合わせて」と題して米国のリフォーム市場について講演。菊池氏は米国の住宅・建材企業と太いパイプを持ち長年建材に輸入、米国住宅の研修ツアーなどを行っている。
菊池氏は、まず米国の最新リモデルの傾向やデザイン・スタイルなどを多数の写真で紹介。続いて北米の住宅市場、リモデル産業の現状について、2022年の新築着工142.5万戸、2021年の既存住宅売買数は612万戸であると紹介。リモデル市場の概要として2022年の市場規模は4320億ドル、前年比17%増。リモデル事業者は52万4000社で従業員数は81万5000人であるとした。既存住宅価格は10%内外上昇したという。またコロナ前のリモデル・リノベーションのトレンドは、主寝室やキッチンのアップグレード、冷暖房機器の最新型への更新などであったが、ニューノーマルに対応したリモデルに焦点があてられるようになってきた。主なものは高齢化への対応として、まず、今の家・コミュニティーに住み続ける等を掲げた「エイジング・イン・プレース(CAPS)」、「リビング・イン・プレイス(CLIPP)」などの新たなコンセプトを紹介した。その他では物価高騰・住宅ローン金利上昇への対応、カーボンニュートラル対応での再生可能エネルギー源へのシフトなどが紹介した。
最後にアメリカの住宅資産価値について、資産価値の維持向上のために事業者や不動産業者、行政、金融機関はどのようにしているかについて述べた。菊池氏は、住宅資産価値が誰がどのように決めているかについて関わるものの役割などを説明し、最後に「コミュニティーが住宅の価値を決める」とまとめた。また、「米国でも高齢化、熟練工不足、省エネ規制などが課題」であるとし、日本と同じような問題を克服していかなければならないと述べた。米国でも長く住み続けたいという高齢者のための住まい方としての「リビング・イン・プレイス」は、今後大いに注目されると述べた。
第2部のパネルディスカッションでは、第1部で話された米国での住宅資産価値を軸に、日本での資産価値向上とリフォームの質について議論した。パネラーは㈱ユウワの今井直人社長、価値住宅㈱の高橋正典社長、㈱北洲の村上ひろみ社長、㈱育暮家ハイホームの杉村喜美雄氏(ジェルコビジョン推進室長)の4氏。ファシテーターは性能アカデミー委員会の福原正則副委員長が務めた。パネラーは地域有力リフォーム店、不動産、大手住関連企業、地域密着工務店という多彩なメンバーで、それぞれの立場から自社が行ってきたリフォーム・リノベーションの内容とその市場での評価、資産価値向上への取り組みなどについて発表を行った。
㈱育暮家ハイホームスは、静岡・藤枝市の地域工務店で新築・リフォームを展開。地方も高齢社会の中にあり、最近では「つなぐ」をテーマに中古住宅・古民家等のリフォーム、建て替えの仕事に取り組んでいる。「質とは何かと問われても、現状では資産価値を上げる視点で仕事をしていない。そのために我々はどんなリフォームをしていけばいいのかを考えることがリフォームの質」ではないかとしてきた。
㈱ユウワは、2004年に地元新潟で起きた中越地震に際しては「社員全員が耐震診断の資格を所得し、地域貢献とお客に喜んでもらう工事をすること」に注力してきた。2006年に新潟で最大級のリフォームショールーム「リフォパーク新潟」を開設し、積極来な営業展開を開始した。しかし売上が倍増していく中でクレームも激増。外注業者とともに問題解決に向けて活動を進め、3年かけてクレーム件数を90%削減した。今井氏は「有料メンテナンス会員が1000世帯あるが半数以上が65歳以上の世帯。この世帯で一番求めるのはスピーディーな対応・明確な金額、担当者の技術と誠実な対応などだ」と述べ、こうした会社だけでなく担当者の対応・能力がリフォームの質につながっているとした。
価値住宅㈱は、不動産売買だけでなくリフォーム・リノベーションに関わって不動産価値の維持・向上を図ろうと事業展開している。現在は自社でもリフォーム部門で行っている。うちの中古住宅売買では建物診断・住宅履歴などの情報開示し、また価格についても土地・建物を分けて表示し建物の残存価値を明示し販売している。高橋氏は「会社のミッションは住宅価値の向上。そのためインスペクションを必須にしている」と述べた。こうした建物の査定の方法については、リフォーム等が価格に反映されなければならないが、日本の不動産業界では余り実施されていない。同社では国が推奨してきた「住宅価格査定マニュアル」を使い、リフォーム等での価値向上が反映されるようにしているとのことである。
㈱北洲は住宅資材販売をはじめ高性能住宅建築、リフォームなどを行う住宅関連企業で、仙台を中心に活動している。リフォーム部門の売上は21億でその内30%が自社新築物件のメンテ、60%が一般顧客のリフォームで大きな特徴は断熱工事含む工事をしているものが53%もあると述べた。
ディスカッションでは、まずリフォームの質と資産価値の向上について議論した。杉村氏は「我々は資産価値を上げていくという視点でリフォームの仕事をしていない。我々がどういうことをしていけば価値の向上につなげられるのか、それがジェルコが求めているリフォームの質の一つではないかと思う」と述べた。今井氏は「リビング・イン・プレイスですが、日本でも65歳以上単身、夫婦世帯の割合が増大しますが、そういう人たちでも暮らしやすく安心して生活できるよう我々が何を提供し支援していけるかというのもテーマだと思います。そうしたことをしていくことでリフォーム業の価値と質とかが上がっていくと思う」と述べた。
高橋氏は中古住宅流通が活発になってきたことで、都市部の不動産業者も真剣になり始めたと指摘。でも不動産業者からするとこの質も問題は、もう一つ不動産業者自体がレベルが上がらないといけないと思う。「現状は売れる家、売れない家が出てきていて、その中では質というか管理がしっかりしている物件が価格に反映さるようになってきています」と述べた。
村上氏は、自社のリフォーム事業について紹介。「命と健康を守る」リフォーム等をコンセプトにして断熱改修工事を中心にやっている。断熱改修は高性能なものを目指しており、冬季室温18度Cを実現する断熱改修商品を開発しており、施工事例を紹介した。村上氏は今後の住宅の質の向上には高い基本性能がベースと語り、「断熱気密・耐震・耐久性能の他、グッド・エイジング、コミュニテーデザインが必要。弊社施工の住宅は築20年以上でも2~3割高く取引されている」など、自社の考える価値向上とそのための活動を述べた。
ファシリテーターの福原氏は、アメリカでの一般的なリフォームの質と資産価値の関係について、住宅価値=工事額×質の関係があることを説明、日本でも資産価値をあげていくためには質の向上を図ることが大切だと述べた。
最後に日本の住宅の資産価値をどのように向上させていくことができるのかについて意見交換した。村上氏は自社が建築した高性能住宅が築20年以上でも建物評価が2、3割高く取引されている事例を詳しく説明した。一般的な物件で土地評価1500万円+建物評価0円-解体費用200万円=1300万円という物件が、同社の高性能住宅の場合は建物評価が750万円でトータル2250万円になったと具大的な資産価値の向上があると述べた。一方高橋氏は「国も中古住宅流通の推進、価値向上を進めてきたがあまりうまくいっていません。当社では建設業許可を取ってやっていますが、リフォームの質を分かる者が不動産まで出来ることが資産価値向上のための一つの切り口ではないか」と指摘した。
杉村氏は今回の主催者として「日本では資産価値ということが馴染んでいないと思う。我々も客にとって資産価値の向上に結び付くような形の仕事はできていない」と反省し、今後も多方面にわたり積極的に議論してほしいとディスカッションを結んだ。
第3回 「トラブル事例から見えて来るリフォームの質」
ジェルコビジョンが掲げる「質の高いリフォーム」とは何かを具体的に追求しようと、昨年から始まった「リフォームの質を考える日」のパネルディスカッション。
4月4日開催された第3回では「トラブル事例から見えて来るリフォームの質」をテーマに、具体的な施工事例からリフォームの質の基本となる「施工の質」について議論した。
第一部の基調講演では、(公財)住宅リフォーム・紛争処理支援センターの平井裕一朗リフォーム情報部長が「住まいダイヤルに寄せられるトラブル事例」について講演。公的機関に寄せられたリフォームのトラブルの傾向、問題点、事例などについてく詳しく説明した。同センターに寄せられた2021年度の電話相談件数はリフォームで1万1000件であり、新築等の相談も含めた全体の相談件数(3万5000件)の3分の1近くに達している。相談内容の6割はトラブルに関する相談で、技術、法令、支援制度等のなどである。同センターでは、これらの相談のうちリフォームでは見積・工事価格関連の相談が多いことからリフォーム見積チェックサービスを行っている。これらに対す主な助言内容は「単価情報等の提供」、「工事範囲や工事内容の確認点について」が90%以上、「耐震改修や施工方法などの技術的な助言」が60%に上っている。公的機関でも価格と工事内容についての相談が多くを占めているという。リフォームでのトラブルの元はこの2つの分野が中心になっているとの指摘である。
具体的な相談事例では、①「保険が使えると勧誘されて契約した。信用できるか」という屋根補修時の火災保険利用について、②「後付けで太陽光パネルを設置したが、すが漏れにより水が漏れた。誰にどのような責任があるか」という施工責任の問題、③「フローリング張替工事により床に傾斜が生じ巾木と接する部分に隙間ができた」という技術的問題、④「外壁塗装のリフォーム工事後1年弱で塗料が剥がれてきた」という施工処理問題について解説、業者側の技術的知見・説明の不足等を指摘した。また今後増えると予測される太陽光発電設置について「後付けパネルのトラブルが多くなることが予想される」と述べた。リフォームでの施工品質と施工責任のさらなる明確化が指摘された。
第二部のパネルディスカッションでは、会員企業経営者4名が登場。ファシリテーターを性能アカデミー委員会の福原正則副委員長が務めた。
まず㈱山口建設の山口博康社長がキッチンダクトの付替えでのトラブル事例を報告。「協力会社に明確な指示をしなかったことからダクトの材質を不適切な材料で施工」と原因を語り、その後の技術的対応策、再発防止のための社員研修で自社のユーチューブの動画活用などについて述べた。
㈱ナックプランニングの阿部倉宗平氏は、自社のトラブルについて次の5例を述べた。①元下関係がある現場での追加工事分の労災保険関係成立票、②音に関するトラブル(戸建)、③音に関するトラブル(工場)、④雨漏り等に関するトラブル、⑤構造躯体に関するトラブルについて、原因、対応、解決策を具体的に述べた。追加工事分の労災保険では原因が担当者の認識不足であり、即是正した。音、雨漏り、構造躯体のトラブルでは、性能・施工に対する知識と工事変更に伴う対応等についての説明や認識が足りなかったとして、それを補う対応を行った。顧客も含めて営業、設計、施工者が共に学び、情報を共有し、共に工事を創っていくことが、トラブル回避に必要であるとまとめた。
㈱三友工務店の吹春清文氏は、リフォーム工事での問題やトラブル回避について戸建てとマンションの事例を取り上げた。戸建てのリフォームでは、既存壁の立ちの悪さの解決。マンションリフォームでは、まず既存スラブ・既存壁の立ちの悪さ解消とコスト削減のためフロア下地を残すという難題の解決方法、もう一つは洗濯機の位置替えでの下階への水漏れ対策の対応方法等について具体的に説明、現場対応力もリフォームの質を構成する大きな要素であると指摘した。
㈱アルティザン建築工房の新谷孝秀社長は、追加工事の発生による契約時工期の1カ月遅れでのトラブルについて述べた。原因は施主への工期遅延の相談、工程再提出を怠った単純ミス。誠意の謝罪と契約書に則った遅延損害金+同額の迷惑料で解決した。再発防止策としては工程表だけでなく進捗管理、顧客との常時コミュニケーション等の徹底を進めている。施工品質だけでなく工期に対する管理も「質」の要素であることを示した。
最後に、パネラー全員で、それぞれが述べられたトラブル事例に対して、施工品質または「リフォームの質」向上のための視点や今後考えなければならないことを議論した。主催の杉村委員長からはパネラーに対して次のような質問があった。
ユーチューブでリフォーム情報発信する山口社長に対してリフォームの質が伝えるコツについて質問。山口社長はユーザーからは商品比較などをして非常に好評だが自社の品質の良さを伝えているかどうかはまだ分からないとした。㈱ナックプランニングの阿部倉氏へは、アフターメンテナンスで多くの実績を持っているがその蓄積がリフォームの質に活かされているかを聞いた。阿部倉氏は「定期点検の継続です。家の状態を常時リスト管理しているので、その時々の状態にあったリフォームを提案することがリフォームの質につながってくると思う」と述べた。㈱三友工務店の吹春氏へは新築とリフォームで品質の違いはあるのか、また技術等々で別々の基準等があるのかと聞いた。吹春氏は「リフォームも新築も質は同じ。リフォームで質が落ちたらお客さんの方もリフォームした意味がなくなる。今はリフォーム用の良い製品が出ているので、そうしたものを活用しながら質は絶対落とさないようにしている」と答えた。アルティザン建築工房の新谷社長には、職人の高齢化や器量格差を施工でどうカバーしているかと質問。新谷社長は「高齢者、若手等でチームを組んでやってきたが、高齢化が進んだチームは一組として勘定できなくなってくる。そのままにしておくと質だけでなく事故につながるので、そういうチームは解体して、他のチームのお手伝いなどをしてもらうようにして雇用を維持している。質についてはチームのリーダーにしっかりした人材を配置していけば保てる」と述べた。
また各社では、大きなクレームにはならないが、自社の施工基準に達していない工事をした場合、顧客がそのミスを「そのままでいいよ」と許容した時どのように対応するかを聞いた。「法的に定められているものはやるが、ちょっと斜めに見えるとかの感覚的なことには、一部減額やサービスで対応」、「今後のアフターメンテを考えると妥協せずわが社の方も納得できるよう心がけている」、「設計・工務で竣工検査し、その後施主検査を必ずしているので、お客さんから言われても基本的には妥協しない」、「お客さんにいいよと言われても、工務店の立場からするとその後長く付き合うわけだから、そのままにして後々調子悪いことになるのであれば必ず直す」との意見が多く、自らの品質維持のために補修工事等は必ず行うというのが全てのパネラーの意見だった。
まとめを行ったファシリテーターの福原氏は、今回のテーマである「トラブル事例から見えて来るリフォームの質」について、現場目線からの捉え方として、[D]意匠実現性
(提案=意匠・性能・予算等)、[S]設計(耐久性・安全性・法対応等)、[P]生産性(施工=技能・工期・施工費用等)の3つの要素に分けられるとした。それぞれの要素が満たされないとき、また3つの関係のバランスが悪い時にトラブルとなると指摘。この3つの領域でパフォーマンスの高い仕事をすることが質の高いリフォームとなるとまとめ、第3回「リフォームの質を考える日」のパネルディスカッションを終了した。
第4回 「リフォームの質を人材育成から考える」
第4回「リフォームの質を人材育成から考える日」のパネルディスカッションでは、リフォーム業界でも喫緊の課題となっている人材の確保・育成について、会員の中から事業形態、企業規模などが異なる個性的なパネラーに登場、リフォームの質の維持・向上のための人材育成方法などについて議論した。
今回は第1部では、基調講演の代わりに各パネラーが自社の人材育成方法を詳しく語ってもらい、「リフォームの質」にとってどんな人材育成が求められるかを議論した。第2部では、会員企業での人材育成についてのアンケート結果をもとに質疑応答を行った。パネラーは山商リフォームサービス㈱の熊谷和樹社長、㈱ビッグアイの杉浦克子社長、㈱ニッソウの前田浩社長、㈱テオリアハウスクリニックの平一暁部長、業務支援㈱の石原信之社長の5氏。ファシリテーターをジェルコの大堀正幸副会長が務めた。
第1部では、各社の人材育成の方法、現状、目的などについて発表してもらった。パネラー各氏の発表テーマと内容は次の通り。
■山商リフォームサービス㈱・熊谷和樹社長
熊谷社長は、今期から新たに採用した「メンター制度」と採用の新卒切替による質向上の効果とその方法に次のように述べた。
10年ほど前から経験者等を採用してきたが離職率が高かったので、2年前から全面的に新卒採用に切り替え社員の質向上ができてきた。
これまでの教育制度では新卒でも12~13週間で現場に出していたが、年に2、3人採用しても数カ月で辞めていなくなる状況が続いていた。そこで、社内体制を工事と営業を分け対応することとし、今期から新卒者はまず総合職として採用し教育している。総合職の教育は入って1年6カ月間、本人の意思を尊重しどの職種についてもいいという形にしている。最初の7カ月間は営業をさせず店舗研修は週1回、それ以外は外部研修としてメーカー等で30項目の研修を行っている。研修では毎日報告書を書いてもらい幹部が状況を把握し助言している。同社では、これらの教育制度をメンター制度と名付けており、新卒者が入社して感じている、「自信が無い、不安・不満」等への①モチベーションの向上、「上司への要望、人間簡易」等への②業務と組織課題の改善、「将来どんな働き方をしたいか」等への③目標設定と評価改善、「課題クリアして成長出来る、今後のキャリアビジョン」等への④能力開発とキャリアサポート等を行っている。
メンター制度の成果は早くも生まれており、ある店舗では新卒社員がすでに1000万円の物件を2、3件成約する実績となって現れているし、今年11名入社したが一人も退職していないので、こうしたこともモチベーションとなっていていい影響が出ている。
■㈱ビッグアイ・杉浦克子社長
ビックアイは社員11名中8名が女性の会社。3年前まで女性が半分だった。いま業界は男性社員を募集して採用できない現実があり、女性がリフォームで働くメリットが多くあるとして、女性活用を全面に掲げ「女性目線のリフォーム」で積極的な展開を進めている。同社は今年40期を迎えて、施工品質の向上、地域貢献、人材育成を掲げてスタートしたが、「現場監督不足、コミュ力低下、待ち顧客からのクレーム」等多くの課題を抱えその対応が急務となっていた。その対応として女性活用を積極的に進めている。同社の女性活用のポイントを次の通り。①自社の社風に合う女性の見極め、②週休二日制の導入、③SDGsFES等のイベント開催、④リモートワークの活用、⑤細部の業務分担・評価義手の明解化である。女性採用では書類審査等のほか面接を2~3回実施。「女性は屯するとコントロールしづらいので、独立心の強い人がいい」という。また週休二日制を導入しているが、変形労働時間制による週40時間制で、1カ月10休にしており、一般的な土日祝祭日を低級にしている。これにより社員家族の共感を得られ採用の幅が広がるし業務効率もアップするとしている。SDGsFESは昨年から開催、社内外のコミュニケーション強化になっている。また「女性は出世より自己成長を望む人が多い」ので評価基準の明確化が必要とのこと。
これら女性が活躍でき環境により、女性のきめ細やかさでデザイン・現場品質の向上に加え、共感性が受けて契約・着工後のクレームがなくなり、粗利益アップにつながっているとのことである。杉浦社長は「質の追及が顧客満足度向上、企業価値に貢献する」とまとめた。
■㈱ニッソウ・前田浩社長
ニッソウは、一般的なリフォームからスタートし、20年前から不動産物件のリフォーム事業を展開し大きく成長し株式上場企業となった。グループで170名の社員を抱え、社員の仕事形態は営業から工務まで行う一気通貫型で、社員一人一人の能力にかかっている。そのため同社の人材育成はОJТによるスキル習得、実践経験が基本で、入社3カ月で営業活動開始、6カ月で営業の実績が出来るようにしている。そのため営業に対する意欲・主体性が出来るよう仕組みを構築している。それらは、①数字での評価、②インセンティブ、③社内表彰、④認知(見守り)などである。同社では2年間給与を保証するが、その後は評価によって決めている。営業成績等の評価が高ければ夏季ボーナスは1000万円越えもあるとのこと。また会社が株式上場企業であることで優秀な人材の確保・育成につながり、営業的にも効果があると前田社長は述べている。
■㈱テオリアハウスクリニック・平一暁取締役営業部長
テオリアハウスクリニックは、シロアリ防除で累計31万棟の実績を持つ老舗企業。20年前は社員平均年齢が45歳だったが将来の会社の姿を見据え2005年から新卒採用に着手した。同社は3K現場である床下がメインの仕事であり若者の入社が期待できないという大きな危機感があった。2014年からは人口減少の先を見据え人材確保・育成を本格的に始めた。千葉・八街に空き家を購入し研修所を開設。仕事で必要な床下点検口を大工に頼まず自分たちで施工が出来たり、その他の補修・改修工事ができるスキルを学ぶ場として、社員が社員に教える研修がスタートた。
その一方で2015年からブランディング化に着手、若者が入社したくなる会社づくりを進めた。ブランドコンセプトを「Understae Hero(縁の下の力持ち)」を掲げ社名変更し、建築士の育成、多能工育成もすすめ、埼玉営業所、町田営業所の開設では社員で事務所改修を行った。また埼玉研修所は研修棟4棟を設置したトレーニングセンターを開設し様々な研修を行っている。人材開発では、インスペクション事業で点検アドバイザーとして女性の新卒採用を開始した。新卒採用では、若手社員が毎年「採用チーム」を結成、説明会開催など採用活動を行っている。
同社ではこうした新たなブランド戦略、新卒者の採用・教育のシステムで、3Kイメージを払拭し採用実績・定着率も向上している。加えて各事業での業績アップにもつながっているとのこと。日本の人口減少を見据えて「社員自らの手で確保し、社員自ら育成する」のがテオリアハウスクリニックの人材の確保・育成であると平氏は結んだ。
第2部のパネルディスカッションでは、事前に行われた「人材の確保・育成」についてジェルコ会員企業へアンケート調査を実施。その結果をもとに議論が行われた。ファシリテーターの大堀氏からアンケート結果の概要が発表された。人材育成が経営の最重要課題とした回答が半数を超えた。年間の離職率は5%未満が全体で71.4%であった。また3年以内の離職率は新卒者で46%、中途採用者で53%といずれも非常に高いことが分かった。女性社員の育成・雇用維持は男性より難しいかでは、普通だとするところが37%に対し、やや難しいまたは難しいとするところも37%あった報告。
離職率についての意見では、「大卒にシフトしてからは下がったが、職種が合わないこともあるのでしょうがないところもある。他の職種に移れるよう配慮している」(熊谷氏)、「離職率は低くはない。ただ、採用コストを抑えたいし辞められるも困る。人を増やして無理に売上を上げるより、経営としては粗利益アップできるよう考えている」(杉浦氏)、「うちは5~10%くらいある。寿退社や出産など様々な理由だが、ミスマッチが起こらないようしている」(平氏)とのことで、若い人たちの離職の理由は様々であり、それぞれに丁寧な対応をしている。
また人材育成について、業務支援㈱の石原信之社長がリフォーム会社での具体的な育成方法・評価方法とケーススタディを解説した。石原氏は研修項目の整理、育成実施ポイント、モチベーションについて述べた。社員が活躍できるモチベーションステップとして、「やらねば」→「やれそう」→「なりたい」を示し、社員の行動に関心を持ち続けることが大切だと述べた。
第5回 「リフォームの質をジェルコの存在意義から考える」
ジェルコが昨年3月から始めた「リフォームの質を考える日」のパネルディスカッション。8月4日に開催された第5回「リフォームの質をジェルコの存在意義から考える」で終了した。
最終となった今回は、それらの問題提起や議論を踏まえて、ジェルコやジェルコ会員として「リフォームの質」に対して、今後どう関わっていくのかという「ジェルコの存在意義」について議論した。
先ず基調講演として、ジェルコ性能アカデミー委員会の性能向上プレミアム住宅「つながリノベ」にも参画している中小企業診断士の岡本光氏がジェルコの存在意義について、最近ビジネスで注目されているパーパス(企業の社会的意義、存在価値)の観点から考察した。岡本氏は今パーパス経営が注目される理由を語り、競争の激化、Z世代の台頭、デジタル化の進展に対応するために絶対必要だと述べた。そのためには、ジェルコの存在意義がどこにあるのかを見つける事であり、それはジェルコの唯一の強み、社会的価値などであるが、具体的にはそれを言語化してイメージをつかむことであるとした。例えば「リフォーム事業を通じて社会をより良くする」という風に自らの仕事での社会課題の解決であり、「顧客満足+社会貢献」がパーパス(存在意義)から考えたリフォームの質であると論じた。またこれまでの「リフォームの質を考える」をまとめると共に、最後に今後パーパスは社会貢献が大きなテーマとなるが、「社会貢献で経営が維持できるか?」と問いかけた。まとめとして、①ジェルコの存在意義は「リフォーム業界と会員の地位の向上」、②存在意義から考えるリフォームの質とは「顧客満足+社会貢献」、③社会貢献で経営が維持できるかでは「社会課題解決は事業の成長エンジン」と述べた。
続いて、上記の基調講演で示されたテーマについて、岡村氏がファシリテーターとなりパネルディスカッションが行われた。パネラーは、盛静男氏(㈱ゆめや社長)、望月俊彦氏(㈱アルファテック社長)、佐々木俊明氏(エスシステム㈱社長)、遠藤光二氏(㈱マイホームデザイン社長)、今井猛氏(喜多ハウジング㈱常務取締役)の5氏。
パネルディスカッションでは、まずジェルコの存在意義について各氏から次のような意見があった。
・盛氏 「会員が共有する志であり、社会価値を生み出すものだと思います。それは20数年前のジェルコ宣言にも入っていますが、ジェルコビジョン2030はそれを具体的な形にしたものです」
・望月氏 「ジェルコ入会のきっかけを考えると、リフォーム事業者の向上心の受け皿だ。会員は年商2~3億円、地域密着の形態が多いので、そうした会員の学びの場をジェルコが提供していると思う」
・今井氏 「正しい倫理観に価値を共感する会員が集う団体。今は様々な団体があるなかで選ばれるためには、きちっとした存在価値が必要。三方良しにプラス作り手良しを実現していく団体」
・遠藤氏 「同じ志を持った企業の集まりで親しく交流でき、セミナーや企業訪問で学んだことを実践できる会でものすごくメリットを感じます。また当初からそうした活動を長年続けている得難い団体であり存在価値だと思う」
・佐々木氏 「会員事業者の明るい未来を創造することだと思う。また中小業者が会のスケールメリットを活かしながら全国の会員へ提供できることがジェルコのいいところであり存在意義だ」
次に、ジェルコが目指すべきリフォームの質については、
・盛氏 「まず質は時代に合わせて変化していくものだと思うし、それゆえ質というのは日々の挑戦することだと思います」
・望月氏 「少子高齢化など社会の変化でリフォームに求められるもの変わってきている。それらの課題解決には商品知識だけでなくいろいろな要素が必要あり、しっかりアンテナを張っていかないと質が高いとは言われない。多様なお客様のニーズをしっかりとらえて満足を作っていかないと事業者の継続発展もないと思います」
・今井氏 「一言でいうと『人質向上』だと思う。リフォームは装置産業ではなく人が人を動かす産業です。家は構造も環境も住人もリフォーム要望も千差万別で、多くのリフォーム業者は顧客の要望のままにモノづくりしてきた。しかしこの人にとって一番大事なのは何かを選択・提案出来るのは人しかいないと思う。作る人の人質向上ことがジェルコの目指す室ではないかと思う」
・遠藤氏 「資産価値向上とかいっても小零細の会社には通じていない。一般会員としては、ジェルコは潰れない会社作りのバックアップするのが役割だと思う。生き残ることが大事だ。ですから時代をリードする会社、創造性豊かな会社にリードしていただいて時流に乗れるようしてもらう。また迷ったときサポートしてもらえる体制が出来ればいい団体だと思います」
佐々木氏 「リフォームの完成度と顧客の満足度がうまく合わないと『質』にならないと思う。ただ満足度は施主のあらゆる角度からの要求でできているので、顧客の要求も常に変化する。提案・施工・サービスだけでなく、スタッフ・経営の質、どれが欠けてもリフォームの質は変化する。ですから、会社は社員・スタッフに支えられているので、経営者だけでなく社員も自己成長できる仕組みを伴ってこそ、リフォームの質が叶えられるのではないかと思っている」
最後に、これまでの議論で提出されたリフォームの質やパーパスという観点から、将来に向かって「ジェルコは何をすべきか。目指すことは」について、各氏が次のように意見を述べた。
「質の高いリフォームの実現には人材が大切だと思う。『将来の種』という客観性も必要だが、『明日のメシ』も必要だ」(盛氏)、「学びの場を提供し続けること。また交流したい人とのつながりの場、社会課題の学びの場を目指したい。それが全国団体のメリット生かすことだと思う」(望月氏)、「顧客が増えているホテル商会のサイトがあるが、登録ホテルも増えている。それはサイト側でホテルをチェックして安心を提供している。これはこれからのジェルコそのものだと思う。ジェルコでもやれないかと思う」(今井氏)、「今後何をするにしても、先ず支部会員同士がよく知合うことが必要だ。その為にはコミュニケーションの場を作ったり企業訪問したり先輩の話を聞く場をもっと提供すること必要」(遠藤氏)、「ジェルコはいろいろやっているが、社員レベルまで活動を落とし込めているか。リフォームの質を上げるためには、社員が自己成長につながるような方法も考えていかないといけない」などの意見、要望が出された。
パネルディスカッション終了後、「リフォームの質を考える日」の企画を主催してきたジェルコビジョン2030推進ガイドライン検討委員会の杉村喜美雄委員長が挨拶し、5回にわたった「リフォームの質」の議論をまとめた。
なお、同委員会では「ジェルコビジョン2030推進ガイドライン」を今後策定する予定で、そのなかで目指すべき「リフォームの質」について提言していく考えだ。
■参考
今回のパネルディスカッション「リフォームの質を考える日」の第1回から第5回まで講演、パネルディスカッションを収録した動画は、会員サイトで視聴できる。
▽第1回 キックオフとなった大枠の「リフォームの質を考える」
(2022年3月29日全国実践研究会)
https://www.jerco.or.jp/reformseminar/21009252/
▽第2回 「資産価値から考えるリフォームの質」(2022年12月2日)
https://www.jerco.or.jp/reformseminar/21011071/
▽第3回 「トラブル事例から見えて来るリフォームの質」(2023年4月4日)
https://www.jerco.or.jp/reformseminar/21011559/
▽第4回 「リフォームの質を人材育成から考える」(2023年6月30日)
https://www.jerco.or.jp/reformseminar/21011949/
▽第5回リフォームの質を考える日『ジェルコの存在意義からリフォームの質を考える』
https://www.jerco.or.jp/reformseminar/21012151/