奈良県の大和郡山市(やまとこおりやまし)までやってきました。
井上代表お一人で運営されているという広々とした店舗。コロナ前はお料理教室などのイベントをしていた空間には、様々なデザインの社名入りユニフォームが積み上げられています。それを楽しそうに手に取り、広げて見せてくださる井上代表。その様子を見るだけでも、人生を楽しんでいらっしゃることが伝わってきます。
今日は、そんな井上代表の素顔に迫りたいと思います。
また今回からインタビュー形式から対談形式に変更しておりますので、是非お楽しみください♪
~リ・スペース様の経緯~
[聞き手] はじめに、リ・スペースさんの事業内容について教えてください。特徴も教えていただけると嬉しいです。
[井上代表] 事業内容は、リフォームやリノベーションをしています。建築一式ですね。もともと現場監督として工務店に勤めていたんですが、平成22年に独立して今に至ります。今年で14年かな。
[聞き手] 現場監督をされていた工務店というのは?
[井上代表] 母体が不動産会社の工務店です。そこで現場監督をやっていました。ゼネコン上がりの人たちもいて、物件も大きなものが多かったです。
[聞き手] ということは公共事業もされていたんですか?
[井上代表] いえ、公共はやっていなかったです。住宅もやるけれど、ビルやマンションがメインで、あとは商業施設もやっていましたね。
[聞き手] ということはバリバリでかい会社ですね(笑)。
[井上代表] バリバリでかい会社でした。何せ、一時は数百億円ほど借金があったらしいですから(笑)。
独立して会社を立ち上げる際には、ちゃんと社長に挨拶に行きました。会社を興すことができたのはその社長のお陰でもありますから。
現在80歳を越えられていますが、「もう借金なくなったんやで」と元気におっしゃっていました(笑)。
[聞き手] 唐突ですが、井上代表って笑顔がいいですね。
[井上代表] そうですか?(笑) ジェルコメンバーからは「井上代表、その顔でよう仕事取れるな」って言われますよ(笑)。
[聞き手] うんうん確かに(笑)。ホームページに笑顔じゃない顔が載っていたら、ちょっとリフォームは頼まないかも(笑)。
[井上代表] 人って見た目が何割とか言うじゃないですか。でも顔だけは隠せないので仕方ないですね。
(一同笑)
[井上代表] 実は視力はいい方なんですが、見た目の印象が柔らかくなるかと思って眼鏡をかけています。
[聞き手] その眼鏡、伊達ですか? ちょっと外してもらってもよろしいですか?
[井上代表] (眼鏡を外す)
[聞き手] もっと強面かと思いましたが意外と柔らかいお顔ですね(笑)。でも確かに、眼鏡かけた方がもっと柔らかくなりますね。
[井上代表] うん。だから眼鏡をかけています(笑)。
[聞き手] 話しを戻しまして、初めて勤めたところは大きな物件ばかりやっている工務店でしたね。
[井上代表] 結局、3つの会社を渡り歩いたんですけど、2つ目は住宅もやっているけれど、公共事業がメインの会社でした。体育館、学校の校舎、いろんな工事を経験させてもらいましたよ。そして、その会社が木工事を依頼していた協力業者が3つ目に勤めた会社です。
[聞き手] そうなんですね! 3つ目の会社に行った時点で、井上代表の年齢はいくつだったんですか?
[井上代表] 20代後半だったかな。
[聞き手] 若い!その3つ目の会社では何年くらい勤められたんですか?
[井上代表] そこは11年くらいかな。そこで木造とリフォームを覚えましたね。
[聞き手] なるほど。「木造建築やリフォームって面白いな」ってなったんでしょうか?
[井上代表] そうそう。と言ってもそこを辞めるときに、すぐさま「リフォームで独立」とはならなかった。自分は“現場監督育ち”なので、現場管理したり施工図面を書いたりできても営業能力が無かった。
だから一度はこの業界自体を辞めようかと思ったんですが、周りの業者さんたちから言われたんです。「新しいことするなら、折角やから建築をした方がいいんちゃう?応援するし」って。
そこから一念発起して今の会社を始めたんですが、分岐点と言えばあそこだったのかなと思いますね。
でもね、18歳からやってきたこの業界ですが、元々入りたくて入ったわけじゃないんですよ。本当は高校を出て2年ほど遊びたかったんですが(笑)、不動産業をやっていた父に無理やり放り込まれたのがきっかけです。
[聞き手] 今、お父様の会社は?
[井上代表] ありません。父が50歳の時に脳溢血になって商売が続けられなくなって廃業しました。
今の僕と同じくらいの年齢ですね。父はその後、77歳まで元気でいてくれましたが。
[聞き手] 2年間遊びたかったというお話でしたが、高校卒業までにかなりお金を貯められたそうですね。高校生なのに凄いなって思うんですが?
[井上代表] ええ、めちゃくちゃ働きましたね。朝早くから中央市場で働いたりと色々やりました。経営者って人に使われるのが嫌いなタイプが多いと思うけど、僕も独立心旺盛というか。そっちの方が面白いと思っています。
[聞き手] 井上代表のそのときの原動力ってなんでしょう。
[井上代表] もう遊びたい一心です(笑)。
高校を卒業して、そのお金で「2年間は遊び倒してやる!」って思っていたんですが、「世間体が悪い」って父に1つ目の会社に放り込まれたんです。
いやもう嫌でしたね。何が嫌って、大阪まで電車に乗るのが嫌なんですよ(笑)。車で動くのは大好きなんですが。
[聞き手] 車がお好きなんですね。
[井上代表] ええ。ドライブも好きですが旅行も好きです。行き先だけ決めて、車で自由に行くのが楽しいですね。泊まるかどうかも決めない。「行動が限られている」のが嫌なので、乗車時間が決まっている電車は苦手なんです。車なら気になった所へ自由に立ち寄れて、時間に縛られずに楽しめますしね。
~起業後について~
[聞き手] それすごく分かります! では、ちょっと話を戻して起業後はどうでしたか?
[井上代表] さっき話したように営業のノウハウがなかったので、勤めていた会社や、設計事務所の協力業者としてお世話になっていました。そうしている間に父や母が僕の会社の営業をしてくれました。そこからお仕事につながることもありました。
[聞き手] 元々お父様が地域で不動産業をやっておられたから、リフォームに繋げやすかったこともあるんでしょうね。
[井上代表] ええ。父の会社のお客様も、知らないリフォーム業者に依頼するより良かったと思います。それにね、障害が残っている父が私の名刺を色んなところに配ってくれていたみたいなんです。父が亡くなった後にそれを知った時は泣きましたね。
[聞き手] そんなことがあったんですね。
[井上代表] ええ。ある日、お客さんが当時の僕の名刺を持って来店されたんですよ。「これ、前に配ってくれてはったね」って。94歳のお客様が、父から受け取った名刺をずっと捨てずに持っていてくださったんです。
[聞き手] それは素晴らしい。めちゃくちゃ嬉しいですね!
~リ・スペースの強み~
[聞き手] それでは、他社にはないと思われる、会社の取組や強みを聞かせていただけますか?
[井上代表] そうですね。僕は“すぐ行動する派”なんです。思い立ったらすぐ動く。お客さんって何かに困っているから電話をしてくる。だからすぐに行きます。今すぐ対処できなくてもいい。とにかく駆けつけたら安心はしてもらえます。
自分の儲けなんてどうでもいいと思っているので、必要なら他社さんを紹介することもありますよ。これが強みと言えるか分かりませんが。
[聞き手] レスポンスが早いのは十分強みですよ。でも、お一人でされていて限界はないんですか?
[井上代表] 大丈夫です。すぐに行けない時は「行けない」ってお伝えしますので。どんな小さな約束事でも、優先順位は絶対に変えない。自分がされたら嫌なので。身内であってもこれは変わりません。それで断られても別に構わないです。
[聞き手] 徹底してますね。
[井上代表] 一人だからできることですね。社員がいれば、社員の家族の生活もあるから、そんなことは言っていられない。したくない仕事もしないといけない。そういうのが嫌で一人でやっているのはありますね。
[聞き手] なるほど。では井上代表が嫌な仕事ってどんな仕事ですか?
[井上代表] 誤弊があるかも知れませんが、自分と合わない人から依頼される仕事ですね。自分の条件や態度を押し付けて、曲げないお客様がいたりすると、断ることもあります(笑)。きっぱり仕事を断れるのは、一人で会社をやっている理由でもあります。
あと、言葉遣いがきついお客様に対して、それを直していただきたいと正直にお伝えしたこともあります(笑)。礼節の部分なので、そこは年上だろうとお客様だろうと対等だと思っています。
[聞き手] 確かにそうですよね。でもそれを貫いているのは凄いと思います。
~印象深かった出来事~
[井上代表] 一度だけ、お客さんと揉めたことがありました。向こうは弁護士を入れてきましたが、こちらは僕一人で対応しました。
訴えの内容はうちの工事に不満があったというものでした。不具合があれば通常は自社で手直ししますが、このお客様はご納得いただけなかったようで裁判になりました。修復にかかる見積書を見ると、必要のない工事まで含まれていたんです。
[聞き手] リ・スペースさんと揉めたお客さんが、工事の不具合に対して別のリフォーム会社で見積もりを取ったということですね。
[井上代表] うん。だから面白い内容の見積書が届くわけです。こちらもプロなので内容を見たらわかります。「これ直すのになんでこれ必要?」とか。「うちがやったら原価計算でこれぐらいでできるけどな」とか。
でも、この現場は設計士さんに図面を引いてもらったんですが、納まらない図面になっていて‥。自分は現場監督のプロだし納める責任もあったと判断して、一応相手の意見も飲んで、自分の試算プラス数万円で着地させました。
当時、ジェルコメンバーに言われました。「裁判に時間をかけても何のメリットもない。結果は出るけど、1ケ月なのか1年なのかその分の時間とコストがかかる。それなら早く終わらせた方がいい。」って。
「自分は間違ってない」という思いもありましたが、言われてみるとそれもそうだと。そういうことを教えてくれるのもジェルコメンバーだからこそです。良い勉強になりました。
~リ・スペース様の弱み~
[聞き手] さて、先ほど強みを聞かしていただきましたが、弱みがあったら教えて欲しいのですが。
[井上代表] はい。それはもう僕が病気になれば、現場が止まるとまでは言わないですけど、やりにくくはなることですね。
[聞き手] お一人だからそうなりますよね。
[井上代表] そう。サラリーマン時代、ヘルニアになってしまって入院・手術をしたことがありました。それで指名の現場を途中で断念したことがあった。でも別の監督が代わってくれたので特に問題はなかった。だけど今は一人なので、そうなった時はジェルコメンバーや近隣の同業仲間に引き継ぎをお願いしようと思っています。
うちでやるより多少高くはなると思いますが、信頼できるところにしかお客様をお預けできない。どうしてもの時はお客様にきちんとご説明して、ご納得いただいた上で引継ぎをお願いしようと思っています。
そんな、信頼できる同業者に出会えたのもジェルコがあったからだと思っています。こういう会に入っているお陰で、弱みをカバーすることができています。
[聞き手] わかります。私も以前、2時間半くらいかかるお宅のおばあちゃんから、「お風呂の電球が切れたから替えて欲しい」と言われたことがありました。10年前に弊社でお風呂をリフォームしたお客様だったんですが、結局その日は行けずに電球交換は翌日になりました。おばあちゃんは1日お風呂に入れなかったことになります。
原価計算したら9,000円。電球を替えるのにそんなにもらえないから、3,000円いただきました。そんな時、近くの会社に頼む事が出来たらお客様もうちもすごく助かったと思いますね。
~井上代表のやりがい~
[聞き手] 井上代表が仕事をする中で1番やりがいを感じるのってどんなことですか?
[井上代表] ありふれているとは思いますが、やっぱりお客様に喜ばれることですね。
[聞き手] ですよね! 印象深いお客さんっていらっしゃいますか?
[井上代表] 今ってGoogleのクチコミがありますが、特にお願いもしていないのに書き込んでくれたりする人がいると、「あっ、嬉しい!」ってなります。そんな風に思ってもらえていたんだと思うとありがたいって。
[聞き手] それは嬉しいですよね。
[井上代表] うちは基本、現調以外はお客様宅に行かずに、打合せや契約は会社でしているんですが、ご高齢やお身体が不自由なお客様の場合、伺った方がいいなって思うんです。そうしてもらえた方が嬉しいでしょ?
そのお客様には電話1本で駆けつけて、お家でソファに座って完結してもらったのですが、すごく喜んでいただけました。
[聞き手] それはすごい対応ですね。
[井上代表] カッコつけてるわけじゃないですが、いつも“プラスアルファのことができたらいいな”と思っています。その方からも、喜びのクチコミをいただいてとても嬉しかったですね。
[聞き手] お客様に井上代表の心が伝わったってことですね。それをちゃんと文字にしてもらえると、こちらも嬉しいですよね。
~10年後について~
[聞き手] では10年後、リ・スペースさんはどんな風になっていたいですか?
[井上代表] 10年後は60代、もう引退していたいですね。
[聞き手] それだけスキルもあって人に喜んでもらうのが嬉しいのに引退ですか?
[井上代表] 僕は自分が楽しみたいんです。自分が楽しまないと人も楽しませられないと思っていて、自分がワクワクするような仕事をしたいと思っています。
[聞き手] ちなみに、井上代表がワクワクする仕事ってどんな仕事ですか?
[井上代表] そうですね。現場に入って行き詰まるような‥なんか「ん~っ」って考えなあかんような仕事ですかね(笑)。
例えば自分が生まれる前の建物。それを解体した時に、「こんな仕事してたんや」って見ることができるような、そんな仕事が好きですね。
[聞き手] 日本家屋がお好きなんですね。
[井上代表] 日本家屋は好きです。あと、面白いホテルや街も好きです。だから面白いものを探して、バイクや車で日本2周目を回っているところです。47都道府県は一度全部回っているから、もう一回行きたいところを、今回っています。
[聞き手] それは楽しそうですね!ちなみにもう1回行きたい場所ってどこでしょう?
[井上代表] そうですね。たくさんありますが、屋久島はもう1回行きたいです。
[聞き手] おいしいものを食べたりできますしね。
[井上代表] そうなんですよ。ネットで何でも買える時代だけど、わざわざ買いに行ったりもします。今度は隠岐の島に塩を買いに行きたいです。オンラインで買えるけど(笑)。現地まで行って塩を買うっていう「お題」を立てて行くのも楽しいですよ。
[聞き手] 参考までにお聞かせください。井上代表が辞める時、リ・スペースさんを頼ってくださっているお客様方はどうされますか?
[井上代表] ジェルコや他の団体で、自分が信頼している人たちに引継ぎの話しはしているのですが、もっと現実的な時期になれば、お客様にもそういう説明をしていく予定です。
~ジェルコについて~
[聞き手] ありがとうございます。先ほどからジェルコのお話が出ていますが、そもそもジェルコに入会したきっかけを教えていただけますか?
[井上代表] 7年前にスペースマインの矢島さんに誘ってもらったことがきっかけです。入会当時、他の会にも入っていたんですが、矢島さんから「こっちの方が井上さんに合うんじゃない?」って言われて。
入会後は体制整備委員長を経て、3年前に副支部長もさせてもらいました。父が亡くなる前に、役は全部下ろさせてもらいましたが。
[聞き手] ジェルコって、井上代表にどんな影響を与えてきましたか?
[井上代表] 同じ経営者の立場で何でも話せるメンバーがいるってことが一番大きいですね。経営者の悩みは経営者でしか分からない部分がありますから、そこは大きいと思っています。「こんなこと言うと恥ずかしいかな」なんて思うことなく、話せるメンバーがいてくれるのはありがたいです。
[聞き手] それすごく思いますね。さらに「ジェルコならでは」という点ってありますか?
[井上代表] メンバーの考え方がオープンな点です。たとえ商圏が被っていたりしても、ジェルコメンバーはノウハウの出し惜しみをしない。「みんなで良くなっていけばいい」って感じが強いですね。
[聞き手] なるほど。視点が全国組織ならではっていうのは、すごくわかります。近畿支部の先って、全国に繋がっている感がありますし。
[井上代表] 今はあまり参加できていませんが、僕、ジェルコの会員になる前に、九州での4支部合同交流会にゲスト参加したんです。そこで知り合った人たちの影響はとても大きかったです。
みんなめちゃくちゃ勉強熱心で、それを押し付けがましくなく、包み隠さず教えてくれる。とても尊敬できたし、刺激を貰えました。僕のジェルコはそこから始まりました。
[聞き手] それは多分、今までの人たちが脈々と作ってきてくれた“ジェルコの文化”なのでしょうね。
[井上代表] うん。そんなジェルコに要望があるとすれば、「小規模事業者だけのコミュニティも欲しいな」って思います。
5億、10億規模の会社のノウハウって、僕みたいに一人でやってる会社には合わないことも多い。それに、大きな会社が過去に実行したことを、今やっても時代に合わないと思うんですよね。そういう意味でも小規模事業者同士で、今の時代に合った成長の仕方を共有したり、共に成長できると楽しいでしょうね。
【インタビューを終えて】
一見強面ですが、お話ししてみると、とても気さくで何でも気軽に話せる方‥そこが、井上代表がお客様から信頼される所以なのだと思いました。
自分の人生に誇りを持ち、自分の好きな人達と、自分の好きなお客様と、自分の好きな仕事をするため、一人にこだわりポリシーを貫く姿には、清々しいほどの潔さを感じました。それはつまり、自分の仕事の影響範囲を理解しているからこそだと思いますし、そこからは、自分の人生に関わってくれる全ての方々への想いの深さも感じられます。
自分一代で終わらせる事業‥でも、それを引き継いてくれる仲間達への信頼があるからこそ。経営者としての潔さを含めた在り方を問われたように思える時間となりました。